今回は、3つの自律神経のうち、最も新しい腹側迷走神経についてもう少し詳しくみていきたいと思います。

 

腹側迷走神経は、爬虫類から哺乳類へと進化する過程で発達した、哺乳類に特有の自律神経です。哺乳類以前に発達した背側迷走神経交感神経は、危険が迫った時の防衛反応として発達した自律神経でしたが、腹側迷走神経は、むしろ防衛反応のスイッチが切られ、安全な環境下で活性化する自律神経です。

 

私たち哺乳類は、生まれながらに社会的な存在であり、他者と相互に関係を持つことを求められます。

哺乳類は、生まれるとすぐに親の世話を受ける必要があります。また、子育てや食事、睡眠などは、孤立しない安全な環境を必要とします。そのためには、親子、家族、仲間といった社会の中で相互につながる必要があります。生存のために必要な他者とのつながりの中で、安全を感じ、愛情や信頼、共感、安心感が生まれると、腹側迷走神経が活性化します。

ポリヴェーガル理論では、腹側迷走神経は「安全である」と感じられたときにのみ活性化し、「健康」「成長」「回復」を促す働きをするとしています。

またポリヴェーガル理論では、「安全である」と感じられるためには、協働調整が必須であると論じています。協働調整とは、お互いに安全であるという合図を出し、心地よくかかわり合いながら、心身の状態を最適な状態へ導いていくことを言います。

 

腹側迷走神経は、心臓や気管支などの働きをコントロールしていますが、顔面の筋肉や声を出す筋肉、聴覚にかかわる筋肉などをコントロールする神経ともネットワークを作り、表情や声の抑揚などを駆使して、互いに安全であることを確認し合っています。

ポリヴェーガル理論では、この仕組みのことを「社会交流システム」と呼び、哺乳類の中でもヒトはこのシステムが高度に発達しています。

 

ポリヴェーガル理論によれば、ヒトを含め哺乳類は、安全であることを求め、腹側迷走神経を活性化しないではいられない生物と言えます。

そのために、互いに表情や声を使って愛情を伝え合い、つながりを持ち、絆を深めようとします。それは決して教育的、道徳的に求められるのではなく、進化の過程で私たち哺乳類にプログラミングされた、生物学的、生理学的な反応なのです。

 

今回のまとめ

腹側迷走神経は、協働調整や社会交流システムによって安全を感じたときにのみ活性化し、健康、成長、回復を促進させる働きを持つ

 

次回は、人間がストレスを感じた時、自律神経の働きがどのように変化していくかを見ていきたいと思います。

 

(つづく)

 

参考文献

・ポリヴェーガル理論入門(ステファン・W・ポージェス著/春秋社)

・セラピーのためのポリヴェーガル理論(デブ・デイナ著/春秋社)

・その生きづらさ、発達性トラウマ?(花丘ちぐさ著/春秋社)

 

ポリヴェーガル理論~自律神経の新しいミカタ~ その0

ポリヴェーガル理論~自律神経の新しいミカタ~ その1

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